2021年10月1日、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開されます!
『007』シリーズの最新作が、幾度もの公開延期を経て、ついに全世界で上映されることが決定しました。
主役のジェームズ・ボンドを演じるのは、本作で卒業となるダニエル・クレイグです。本シリーズ以外でも、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)や『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)など、ミステリ作品に主演し活躍してきました。そして、今回の敵・サフィンを演じるのは、ラミ・マレック。『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)でフレディ・マーキュリーの完コピを披露し、アカデミー主演男優賞を受賞しています。
骨太なのにセクシーな、隙のないスパイ映画の007シリーズは、過去にはショーン・コネリー、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナンがボンド役を努めてきました。ショーン・コネリーは無骨でワイルド、ロジャー・ムーアは華麗でスマート、だとすると、ダニエル・クレイグはそのどちらも兼ね備えた性質を持ち合わせている稀有な存在ではないでしょうか。

言い過ぎじゃない!?
そこで今回は、ダニエル・クレイグ版の過去の007シリーズの全作品を紹介します!
『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)
「ダブル・オー」と呼ばれる、殺しのライセンスを与えられたMI6のエージェントのジェームズ・ボンドは、マダガスカルのナムブツ大使館に逃げ込んだテロ容疑者を追い詰めるも、現地の兵隊に囲まれてしまい、やむなく彼を殺害してその場を去ります。彼が持っていた携帯の通話履歴をたどったボンドは、バハマのリゾート地に飛び、怪しげな金持ち・ディミトリオスの身辺を探っていくうちに、空港の爆破テロ計画へと行き当たります。その黒幕であるル・シッフルは、ウガンダのゲリラ組織から受け取った大金を元手に、テロにより暴落させた株の空売りを企んでいましたが、事件はすんでのところでボンドの阻止により失敗。その後、資金を失った彼が、モンテネグロで行われる高レートの裏カジノポーカーに参加するという情報を手に入れたため、MI6の司令官「M」はボンドをその試合へと潜り込ませます。
新シリーズの開幕は、満を持して、イアン・フレミングが手掛けた原作小説のシリーズ1作目の同名作を採用しました。監督は『バーティカル・リミット』(2000)などのマーティン・キャンベルが務めています。冒頭のパルクールアクションに始まり、本格的な肉弾戦アクションが満載な一方、ポーカーのシーンにははらはらと手に汗を握る、動と静にメリハリが効いた名作です。
いわゆる「ボンド・ガール」と呼ばれる本シリーズのヒロイン、今回のヴェスパー役にはフランス出身のエヴァ・グリーンが抜擢。憂いを秘めた目元が特徴的で、ミステリアスな魅力に富んだ彼女は、その後『ダーク・シャドウ』(2012)や『ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち』(2016)、『ダンボ』(2019)など、ティム・バートン監督のファンタジーに重宝されています。
また、このシリーズでは、敵のボス役に演技派俳優がキャスティングされるところも見どころです。今回のル・シッフルを演じたのは、マッツ・ミケルセンでした。デンマーク出身で、『ドクター・ストレンジ』(2016)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)などの超大作から『永遠の門 ゴッホの見た未来』(2018)や『アナザーラウンド』(2020)といった小粒で個性的な良作まで、大活躍しています。
『007/慰めの報酬』(2008)
ジェームズ・ボンドは、前作で捕らえた「Mr.ホワイト」を、司令官のMの元へと届けます。しかし、突如として彼女のボディガードが銃を取り出して暴れ出し、ホワイトをその場から逃がすのでした。ボンドは裏切り者のボディガードを追跡して追いつめたものの、生け捕りは叶わず殺してしまいました。しかし彼が残した遺留品から、スレイドという名の男の存在が明らかになります。彼はその男が滞在するハイチに飛び、彼に成りすまして行動すると、カミーユという女性が近づいてきました。そして彼女は、ドミニク・グリーンという、表向きは環境保護の活動家、裏では秘密組織の幹部である男と通じていました。ボンドは、これらの一連の物事の背後に、巨大な陰謀が渦巻いていることを知って調査を進めますが、その危険な個人行動の繰り返しにより、MI6の本部からは見放されてしまうのでした。
上演時間106分というコンパクトな仕上がりの作品ですが、巨大なオベラ会場で繰り広げられる狡猾な駆け引きや、ただのカーチェイスのみならず、船や飛行機を駆使した戦闘シーンも盛りだくさんで、そのスケールの大きさには遜色がありません。本作の特徴は、私怨と職務の間で揺れるボンドが比較的シリアスなトーンで描かれるところです。
本作のボスである、不敵な卑怯者、ドミニク・グリーンを演じたのは、マチュー・アマルリック。『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)で名を挙げた個性派俳優で、普段はフランス映画を中心に活躍をしていますが、『ミュンヘン』(2005)や『グランド・ブタペスト・ホテル』(2014)などの、ハリウッドにも進出しています。また、ヒロインを担当したのは、オルガ・キュリレンコ。『スターリンの葬送協奏曲』(2017)や『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019)では、ウクライナ出身というその出自を活かしてキーパーソンを演じました。

『ブラック・ウィドウ』にも出てたね!
『007/スカイフォール』(2012)
イスタンブールにてMI6のエージェントが襲撃され、世界中のテロ組織に潜入してい捜査員たちのリストが入ったハードディスクが強奪されてしまいます。ボンドは、逃げた敵を追いかけて格闘、列車の屋根の上でもみ合いになります。仲間のイブは陸橋に駆けつけ、Mの司令のもと、敵の狙撃を試みますが誤ってボンドに着弾、彼はそのまま川へと墜落してしまいました。それから数ヶ月。死んだと思われていたボンドは、東南アジアの僻地でひっそりと暮らしていました。しかしある日、ロンドンのMI6本部がハッキングされて爆破されたというニュースを見た彼は、ロンドンのMの元に舞い戻ります。捜査員として復職した彼は上海へ飛び、ディスクを持ち逃げした男を発見、しかし雇い主を聞き出せずに殺してしまいます。遺留品の中にあったカジノのコインから次はマカオに向かったボンドは、上海でも目撃したセヴリンという怪しげな女性に出会います。何かに怯えた彼女を説得して、ついにその黒幕と接触することに成功。それは、過去にMの部下としてダブル・オーの任務についていた、シルヴァという男でした。
今回は、程よくコメディ要素もあり、また新世代の「Q」による最新スパイガジェットも登場し、わくわくする普遍的なエンタメに仕上がっています。一方で、MI6という特殊な組織の、そしてボンドやMの「過去」にフォーカスした作品であり、本シリーズの中でも大きな転換期となった一作でした。

今回の主題歌はアデルだよ!ちなみにノータイムトゥダイはビリー・アイリッシュ!
本作から新たに加入した面々は、まずは新人捜査官・イブを演じたナオミ・ハリス。『28日後…』(2002)にてヒロインに抜擢、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズではティア・ダルマを神々しく演じました。また、世代交代したQ役にはベン・ウィショー。『パフューム ある人殺しの物語』(2007)の主演に抜擢された後、『クラウド・アトラス』(2012)や『ロブスター』(2015)などで、ひと癖のある個性的な登場人物を演じました。そして、今回の敵のボスにハビエル・バルデム。『ノーカントリー』(2007)でアカデミー主演男優賞を受賞した怪優で、その不気味な存在感は歴代の敵の中でも随一でした。
それから、なんと言っても、今回のボンド・ガールは、ナオミ・ハリスでもベレニス・マーロウでもなく、彼女だと言って良いでしょう、ジュディ・デンチです。ピアーズ・ブロスナン版の『007/ゴールデンアイ』(1995)からMを演じ続け、(次作に映像で出演はしているものの)、本作でついに華々しく卒業となりました。冷徹で合理的な司令官である一方で、ボンドには結局信頼を置き厚情をかけるという、ツンデレなところのある役で、本シリーズを大黒柱のように支えてくれました。
『007/スペクター』(2015)
メキシコの「死者の日」の祭りのさなか、ボンドは秘密組織に属するスキアラという男を追います。ヘリコプターに乗り込んだ彼を追って乗り込んで彼を殺害。そして彼が身につけていた、組織に縁があるであろう指輪を手に入れます。しかし、操縦士を倒して制御不能になったヘリは、あわや群衆の集まる広場に墜落しかける事態に。ロンドンの本部に戻った彼は、Mを引き継いだマロリーから厳重注意を受けて停職処分になります。しかし、彼の行動は、先代のMが残したビデオメッセージに従ったものでした。同僚のマネーペニーとQの協力のもと、独自に調査を始めた彼は、ローマで行われたスキアラの葬儀を訪れます。そこで出会った未亡人を誘惑し、彼が属していた組織の集会の情報を手に入れて潜り込むことに成功。そこで、世界征服を画策する犯罪集団・スペクターと、その首領のブロフェルドを目撃するのでした。
これまでの3作の悪役たちを紐付ける悪の組織に、ついに肉薄する煮詰まったストーリーになってきました。監督を努めたのは前作に引き続き、『アメリカン・ビューティー』(1999)や『ジャーヘッド』(2005)など、皮肉を込めた社会派の作品を得意としたサム・メンデス監督です。
ボンドガールには、これまで出ていなかったのが不思議、という、『アレックス』(2002)や『パッション』(2004)にも出演していた、迫力のあるセクシーさを持つモニカ・ベルッチと、ライバル作の『ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル』(2011)でも活躍していた、暗く濡れた瞳を持ち合わせるレア・セドゥ。
そして、悪の組織「スペクター」の首領である、最大のボスは、ついに登場、クリストフ・ヴァルツです。クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009)と『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)でアカデミー助演男優賞を受賞した名優です。知的で冷徹な純粋な悪には、思わず震え上がってしまう迫力がありました。