2021年9月9日、『マトリックス レザレクションズ』の予告編が、全世界に向けて公開されました!
2021年12月に公開予定の本作は、SFアクション映画『マトリックス』(1999)、『マトリックス リローデッド』(2003)、『マトリックス レボリューションズ』(2003)の3部作の、正当な続編です。
当時は「映像革命」と謳われたこのシリーズ。それまでのハリウッド映画ではそこまで活用されなかった、バレットタイムという撮影技術や、香港映画で主流だったワイヤーアクションを、メインのシーンで大々的に採用したことで、仮想空間における戦いおける、人間離れした独特な動作を表すことに成功しました。

あの銃弾をよけるやつね― マネしたよねー
主演のネオ役はキアヌ・リーヴスが続投。トリニティ役のキャリー・アン・モスも引き続き登場します。監督はラナ・ウォシャウスキーで、前作までは妹のリリー・ウォシャウスキーと共同で監督を務めていました。
映画界には、兄弟で活躍するクリエイターが目立ちます。そもそもさかのぼってみると、フランスの写真家・リュミエール兄弟が、1895年に制作した『工場の出口』が世界初の実写映画だった、ということに、不思議な縁を感じませんでしょうか。
そこで今回は、兄弟/姉妹で制作した映画のおすすめをご紹介します!
『クラウド アトラス』(2012)
6つの時代の物語。1849年、奴隷商人のアダムは、悪徳医師のグースと共に砂浜にいました。1973年、ジャーナリストのルイサ・レイは物理学者の殺人事件を追っています。2012年では、老編集者のガベンディッシュが作家のダーモットとトラブルを起こします。1931年、音楽家の青年フロビシャーがバスタブで自殺しようとしています。2144年には、クローンのソンミ451が使役させられている現状に疑問を持ちます。そして2321年、文明が崩壊した地球、ザックリ―は部族間の戦いに巻き込まれます。一見すると別々の世界観のストーリーがランダムに進みますが、次第にそれぞれが呼応していくのでした。

??・・○%×$☆♭#▲!
数行であらすじを書くのはちょっと無理がありました。時代劇やヒューマンドラマ、サスペンスとSFアクションが共存しているという、奇妙な総合エンタメです。しかし、時代を超えた縁、そして転生といった繋がりが次第に見えてきて、そのスケールの大きさにがつんと圧倒されてしまいます。
出演者がとっても豪華で個性的な面々でした。『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)や『プライベート・ライアン』(1998)のトム・ハンクス、『チョコレート』(2001)や『X-MEN』(2000)のハル・ベリー、『007 スカイフォール』(2012)や『リトル・ジョー』(2019)のベン・ウィショー、『リトル・ヴォイス』(1998)や『ムーラン・ルージュ』(2001)のジム・ブロードベント、『グエムル-漢江の怪物-』(2006)や『空気人形』(2009)のペ・ドゥナ、などなど。そして、映画の根底に流れる「転生」を表現するため、それぞれの役者が1人6役を演じている、ということに驚きでした。
前述のウォシャウスキー姉妹(制作当時は兄弟)に加え、『ラン・ローラ・ラン』(1998)や『パフューム ある人殺しの物語』(2006)、『王様のためのホログラム』(2016)などのトム・ティクヴァが共同監督を務めました。まったく異なる世界観の映画を作る作家同士がコラボレーションすることで、映画の持つ多様性の力に、さらに磨きがかかっています。
『ビッグ・リボウスキ』(1998)
90年代初頭のロサンゼルス、無職のデュード・リボウスキは、ベトナム戦争帰りのウォルターと気の弱いドニーと、いつもボウリング場でつるんでいます。デュードはある日、突然自宅を襲撃してきた暴漢に襲われます。しかしそれはどうやら、同じ苗字の富豪と勘違いされたようでした。そして、それが縁で本物の富豪のリボウスキに呼ばれることになった彼は、誘拐された妻の100万ドルの身代金を払う役目を引き受けることになります。しかし、受け渡しに向かおうとしたところにウォルターが介入し、金の代わりに偽物のブリーフケースを渡してしまい、挙句の果てに手元に残った100万ドルは、車ごと盗難に遭ってしまうのでした。
話の筋としては、主人公が怪しげな事件に巻き込まれていくという、一種のハードボイルドミステリーではありますが、この監督にかかると、独特のオフビートの空気感が漂う、不思議なコメディに仕上がりました。ウォルターとドニーのキャラクターが最高で、くすくす笑えますが、最後はしんみりとさせられます。
主演のデュードは『ローズ・イン・タイドランド』(2005)や『クレイジー・ハート』(2009)のジェフ・ブリッジズ。そして、共演のウォルターには『夢を生きた男/ザ・ベーブ』(1991)『フリントストーン/モダン石器時代』(1994)のジョン・グッドマン、ドニーは『パルプ・フィクション』(1994)や『アルマゲドン』(1998)のスティーヴ・ブシェミ。その他にも、ジュリアン・ムーアやフィリップ・シーモア・ホフマン、ジョン・タートゥーロなど個性派の面々が参加しています。
監督はジョエル・コーエン、脚本はイーサン・コーエンという人気兄弟コンビの作品です。彼らの手掛けた作品にはすべて、飄々としたテンポの映像であり、犯罪を題材にしている、という共通点があります。けれど、作品によって、全く違った印象を受ける、というところもあるのが、面白い特徴です。たとえば、ホラー寄りのサスペンスの『ノーカントリー』(2007)や本格派西部劇の『トゥルー・グリット』(2010)などがある一方で、バカバカしいブラック・コメディ『レディ・キラーズ』(2004)や『バーン・アフター・リーディング』(2008)もあり、一筋縄では行かない監督です。
『ジム・キャリーはMr.ダマ―』(1994)
ロードアイランド州で一緒に住んでいるロイドとハリ―は、いつも馬鹿なことをして笑い合う仲良し2人組です。ハリ―は犬の送迎の仕事をしていました。しかし品評会に出場する犬を「ワンワンカー」で運んだ際に、きちんとケージに入れていなかったため、大切な犬たちがソースまみれになってしまい、こっぴどく怒られてクビに。一方のロイドはリムジンタクシーの運転手。ある日の乗客・メアリーに一目惚れをしてしまいます。送り届けた空港で、彼女がブリーフケースをロビーに置き忘れて飛行機に乗ってしまったことに気付いたロイドは、彼女に届けてあげようとケースを持ち帰ります。しかし、実はそれは誘拐されたメアリーの夫の身代金でした。それを知らない2人は、彼女が向かった、3000km離れたアスペンへと、ワンワン・カーを飛ばします。しかし、金を取られた誘拐犯たちは、それを追いかけるのでした。

ワンワン・・・カー・・??
ジム・キャリーの出世作です。1994年は彼の年となり、本作のほかにも『エース・ベンチュラ』や『マスク』が公開され、一気にハリウッドを代表するコメディアンに駆け上がりました。特に何かを皮肉っているわけでもなく、見事な伏線回収があるわけでもない、2人の道化を笑えば良いだけのど直球なコメディですが、動き回る表情筋や優れた形態模写を繰り出す、ジム・キャリーの身体能力に関心させられるところもあります。また、共演するジェフ・ダニエルズは本来はコメディアンではなく、『スピード』(1994)や『スティーブ・ジョブズ』(2015)などでも出演する演技派です。
そして監督・脚本を務めるのが、ピーター・ファレリーとボビー・ファレリーの兄弟です。本作以降もキャメロン・ディアス出演の『メリーに首ったけ』(1998)や、ジャック・ブラック主演の『愛しのローズマリー』(2001)など、スラップスティックコメディを取り続けているというコンビです。本作の20年ぶりの続編『帰ってきたMr.ダマ― バカMAX!』(2014)も話題となりました。
またその後、ピータ・ファレリーは、ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリが主演した『グリーンブック』(2018)を監督。これが思いも寄らない感動作に仕上がり、見事に第91回アカデミー賞の作品賞を受賞しました。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)
マイティ・ソーの故郷であるアスガルドの宇宙船が、サノスの一味によって襲撃され、パワー・ストーンとスペース・ストーンが奪われます。彼の計画は、石を全て集めて願いごとをし、全宇宙の生命を半分にすることでした。かろうじて逃げ出したハルクは地球に到着、ドクター・ストレンジとアイアンマンにそのことを告げますが、サノスの手下に急襲され、石を持っていたストレンジは宇宙に連れさられます。一方で、宇宙を航行していたガーディアンズは、漂流していたソ―を発見して助けます。そして状況を聞いた彼らは、先回りして石を守ろうと惑星ノーウェアへ向かいます。その頃地球では、マインド・ストーンを持つヴィジョンとスカーレット・ウィッチの元にもサノスの手下が到着しますが、キャプテン・アメリカとブラック・ウィドウが駆けつけて応戦するのでした。
それまで別々の単独映画で活躍していたMCUの人気者たちが、ついに全員大集合する作品です。それまでも『アベンジャーズ』(2012)や『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)など、同じつくりの作品はありましたが、今回の、続編『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)との2部作は、そのスケールが桁違いとなりました。
監督は、アンソニー・ルッソとジョー・ルッソの兄弟が務めました。MCUシリーズでは、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2018)を担当したのちに、引き続き本作も手掛けることになりました。シリーズ他作品を手掛けたタイカ・ワイティティやジェームズ・ガンに比べると、コメディ要素は抑えめで、情緒的なドラマに寄る傾向がありますが、その点、本作と『エンドゲーム』には適任でした。
『ナイトクローラー』(2014)
ロサンゼルスに住む男・ルイスは工事現場の備品を盗んではスクラップ工場に横流しするという、いかがわしい仕事をして食いつないでいました。ある日、道端で交通事故の現場を通りかかった際、その様子を撮影するカメラマンに遭遇します。どうやらテレビ局に映像を売りつけているようであり、その仕事に興味を持った彼は、自転車を盗んで作った金で、警察無線傍受の機械とビデオカメラを手に入れます。そして、通報の現場にかけつけ、たまたま撮れた強盗の被害者が血を流している映像をテレビ局に持ち込んだところ、ニュース番組のディレクターであるニナに評価され、報酬をもらいます。すぐにコツを掴んだ彼は、助手を雇って夜な夜な映像を撮り、多額の金を稼ぎ始めます。しかし、倫理観がどこか欠如している彼の行動は、次第にエスカレートしていくのでした。
呪いのように根底に流れるどこか異常で胸糞悪い空気感にはらはらさせられる、個性的なサスペンス映画です。主演のジェイク・ギレンホールが、負の方向にエネルギッシュな男を怪演しています。『ドニー・ダーコ』(2001)の暗い少年を演じ、『ブロークバック・マウンテン』(2005)ではアカデミー助演男優賞にノミネートされた彼は、その後も『ゾディアック』(2007)や『プリズナーズ』(2013)、『サウスポー』(2015)など、数多くの変化球な良作に出演しています。
監督は『落下の王国』(2006)や『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017)などで脚本を務めたダン・ギルロイ。そして、制作のトニー・ギルロイは彼の兄で、『ディアボロス/悪魔の扉』(1997)や『フィクサー』(2007)などで脚本を務めていました。トニーが監督、ダンが脚本という布陣で、ジェレミー・レナーが主演した『ボーン・レガシー』(2012)もおすすめです。