2021年9月3日、『シャン・チー テン・リングスの伝説』が公開されます!
本作は、マーベル・シネマティック・ユニバースの新シリーズです。主人公のシャン・チーは、ドクター・ストレンジやスカーレット・ウィッチのように魔法を使えるわけでもないですし、アイアンマンやファルコンのように最新鋭の技術の粋を尽くしたパワードスーツに身を包んでいるということでもありません。カンフーなどの武術を極めた、地球に生まれた普通の人間に過ぎないのです。しかし、その戦闘力は実に類まれなるものであり、他の超人的なキャラクターたちと同等に渡り合うことができます。
MCUでは初めて、アジア人のキャラクターが主人公となり、シャン・チー役には中国系カナダ人のシム・リウが抜擢されました。共演には、『恋する惑星』(1994)や『花様年華』(2000)など、ウォン・カーウァイ監督作常連のトニー・レオンや、香港でサモ・ハン・キンポーやジャッキー・チェンの映画でヒロインを務めた後、『SAYURI』(2005)や『モーガン プロトタイプL-9』(2016)などのハリウッド映画でも活躍中のミシェル・ヨーなどが名を連ねています。

香港っぽい面々だねー
カンフーと言えば、ブルース・リーが主演した『燃えよドラゴン』(1973)が大ヒットして確立された映画内アクション手法のひとつです。その柔が剛を制する新鮮なファイトスタイルは、香港や中国のみならず、世界中のバトル映画で使われるようになりました。
そこで今回は、本格的なカンフーアクションが観られる、ハリウッド映画をご紹介します!
『ベスト・キッド』(2010)
アメリカから北京に移住した母親と2人暮らしの少年ドレは、バイオリンに打ち込んでいる少女メイ・リンと知り合って仲良くなる一方で、近所の子どもたちとは馴染むことができず、いじめられる毎日でした。その日も不良のチョンたちに殴られているところを、マンション設備の管理人のハンに助けられます。2人は、チョンが通うカンフー道場に苦情を言いに行きますが、師範のリーにも、「ここで戦って勝負しろ」と言われてしまいます。ハンは、ふと目に入ったポスターを見て「ドレが武術大会に出場して買ったら手出しをするな」と勝手に約束をしてしまいます。実はハンはカンフーの達人であり、そこからドレに特訓をし始めます。しかしそれは、上着を着て脱いでを繰り返すという、意味のわからないものでした。
武術を題材にした少年が主人公のスポ根成長譚です。『ベスト・キッド』(1984)では、アメリカを舞台として、日本人の師匠から空手を習う、というストーリーでしたが、今回のリメイク版ではカンフーを扱うことになりました。また、舞台が北京に移っています。
なんと言っても、師匠のハンを演じているのが、ジャッキー・チェンというのが、本作のいちばんの特長。『ドランクモンキー 酔拳』(1978)や『プロジェクトA』(1983)、『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)などいった、コメディの要素を取り入れた名作アクション映画を作ってきたレジェンドです。今回は彼らしいおふざけを封印し、寡黙な達人を端然と演じました。
主演のドレを演じたのは、ジェイデン・スミス。本作でプロデューサーも務めているウィル・スミスの長男で、現在では歌手・ラッパーとして活躍しています。
『マトリックス』(1999)
ハッカーのネオは、モーフィアスという謎の男に導かれ、現実だと思いこんでいた世界から目覚めました。そこは、人類がAIとの戦争に敗北し、機械に支配されたディストピアでした。人間たちは、コンピューターの動力源になるために家畜のように培養され、仮想現実を見せられていたのです。彼らは機械に一矢報いるため、サイバースペースと現実を行き来しながら戦います。
『マトリックス リローデッド』(2003)『マトリックス レボリューションズ』(2003)へと続く3部作の第一弾です。
ひと目見て「マトリックスだ」と分かる特徴は唯一無二です。真っ黒なロングコートにサングラスという衣装や、「バレットタイム」と呼ばれる特撮を使った、銃の弾を避けるアクションシーンは、映画好きではなくても広く知られているでしょう。
そしてもうひとつの特徴は、肉弾戦にはカンフーが採用され、またワイヤーを使った空中戦もある、というところでした。香港映画界では当たり前に使われるこの手法は、ともすれば不自然な動作ではありますが、一方では個性的な魅力を与えています。
そして、十数年の沈黙を破り、なんと4作目の制作が発表されました!主人公のネオ役はもちろんキアヌ・リーヴス、パートナーのトリニティを演じるキャリー・アン・モスも参加。2021年の年末に公開される予定となっています。
『ジョン・ウィック』(2014)
敏腕殺し屋であったジョン・ウィックは、結婚を機に足を洗って静かに暮らしていました。しかし、最愛の妻を病気で亡くしてしまい、生きる希望を失いかけていて、唯一の支えとなっているのは、妻が残してくれたペットの子犬だけでした。しかしある日、家に強盗が侵入して車を盗まれ、大事な犬も殺されていまいます。犯人がかつて仕事を請け負っていたマフィアの一味だと知った彼は、復讐のために立ち上がります。その危険性を知っているマフィアのボス・ヴィゴは阻止するため、彼に高額の懸賞金をかけるのでした。
本作の主演のキャラクター、ジョン・ウィックが得意とする接近戦のスタイルは、カンフー+ガン(銃)で「ガンフー」と呼ばれ、新たなジャンルを定義することになりました。その後、『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)、『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)と続く人気シリーズとなり、現在は4作目も製作中ということです。

さっきマトリックスも4作目作るっていってたよね、キアヌすごい!
主演はこちらもキアヌ・リーヴスが担当。敵のボスには、『ミレニアム』シリーズのスウェーデン版で主役を演じたミカエル・ニクヴィスト。また、ウィックを狙いに来るベテラン殺し屋は、『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』(2000)や『ライトハウス』(2019)など、数多くの作品で個性的な脇役を努めるウィレム・デフォーが演じています。
『カンフー・パンダ』(2008)
パンダのポ―は、「平和の谷」と呼ばれる国のラーメン屋で働くカンフーオタクです。でも、太った体が重すぎるため、自身では戦うことはできないのでした。一方、その国の山奥では、レッサーパンダのシーフー老師のもと、カンフーマスターたちが修行をしていました。彼らの目標は、古来から伝わる伝説の竜の巻物を読む権利を得て、「龍の戦士」になるということ。そんなある日、シーフーの更に師匠であるカメのウーグウェイ導師が、1つの兆しを得ます。それは、過去に因縁のある、凶悪なユキヒョウのタイ・ランが、刑務所を脱獄して攻め込んでくる、というもの。それに対抗できるのは龍の戦士しかいないので、ついに選出するための演武会が行われます。しかし、ひょんなことから会場に入り込んだポーが、誤って戦士の候補として指名されてしまうのでした。
『シュレック』(2001)や『ヒックとドラゴン』(2010)などを手掛けるドリームワークス・アニメーション制作の人気シリーズです。動物たちにデフォルメされた子供向けのアニメかと思いきや、本場中国で語られるような精神世界を取り込んだ武侠映画の様相を呈しており、カンフー映画にはまるには入門編としてぴったりです。

シュレックじゃねーよ!
ポーの声を担当したのは、『スクール・オブ・ロック』(2003)や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)のジャック・ブラック。シーフー老師には『クレイマー、クレイマー』(1979)や『レインマン』(1988)のダスティン・ホフマンが扮しています。また、脇役にも、アンジェリーナ・ジョリーやジャッキー・チェン、セス・ローガンなどの有名どころがそろった豪華な面々でした。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)
遠い昔の宇宙の話。ジン・アーソは幼い頃に両親と別れ、反乱軍の戦士であるソウ・ゲレラに引き取られて育てられました。彼女の父親であるゲイレン・アーソは武器の設計士で、惑星を一撃で破壊可能な兵器であるデス・スターの開発要員として、妻を殺され、帝国軍に連れ去られていたのでした。しかしその恨みを忘れていなかった彼は、デス・スターの弱点が分かるデータを秘密裏に流出させてソウの元に送り込みます。しかしソウは今では過激派を率いる立場になっていました。なんとかその情報を手に入れるため、反乱同盟軍は帝国軍に逮捕されていたジン・アーソを脱獄させ、仲間に引き込むのでした。
『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)と『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)の間の話。ダース・ベイダーが帝国軍を堅牢な巨大組織として確立させた時代、なんとか反乱を起こそうともがいていた存在がいた、というエピソードです。
ルークやアナキンといった、力を手に入れた「天才」の活躍と苦悩が描かれるスター・ウォーズのシリーズにおいて、純粋に仲間との絆によって巨悪に立ち向かうという、正攻法のアドベンチャー映画であり、ファンでなくても、単体で見て楽しめる1作となっています。
本作「カンフー映画」の文脈に加えたのは、本作でチアルート・イムウェという、盲目の戦士を演じるドニー・イェンの、とにかく「早い」アクションが、映画内で際立って輝いていたためです。『HERO』(2002)や『イップ・マン 序章』(2008)などで活躍する彼は、アクション監督としてのキャリアも長い本格派の武術家です。