2021年8月20日、『孤狼の血 LEVEL2』が公開されます!
前作は『孤狼の血』(2018)。広島を拠点とする暴力団組織の抗争や、捜査を行う型破りな警察たちを描いた群像劇です。主演の刑事を役所広司が演じその部下に松坂桃李。一方の暴力団側は竹野内豊や江口洋介、石橋蓮司やピエール瀧などが登場しました。
なんだかリアルだったなあ〜
本作はその続編で、引き続き白石和彌が監督を担当。今回は松坂桃李が主人公で、共演者には鈴木亮平や斎藤工、吉田鋼太郎や寺島進、西野七瀬などが新たに参加。今回もエネルギッシュな映画になりそうです。
ヤクザやマフィア、ギャングといったジャンルの映画は、これまでにも数多く作られてきました。迫力あるセリフやアクションを楽しむことができます。そこで今回は、そんなアウトローたちが活躍する映画をご紹介します!
『カジノ』(1995)
まず最初は、1970年代のラスベガスを牛耳っていたマフィアたちを描いた『カジノ』をご紹介します。
ギャンブルの予想屋を生業にしていた通称「エース」は、一旗揚げようとラスベガスに拠点を移しました。彼はマフィアのボスたちから信頼を得ることができ、巨大なカジノ「タンジール」の経営を任されることに。美しい妻ジンジャーも手に入れ、順風満帆な生活を行っていました。しかし、彼の幼馴染でもある、短気で暴力的なニッキ―がボディガードにつくことになってからトラブルが耐えないように。一方で妻が浮気していることも発覚します。
ノンフィクションが原作で、実在の人物や出来事をモデルとした映画ですが、そんな裏側まで描いて良いのか心配になるくらいにインモラルな内容です。また、それでいて、登場人物たちそれぞれの個性的な「悪さ」が魅力的です。3時間の映画ですが、ストーリーにぐいぐい引き込まれてあっという間に感じられます。
監督はマーティン・スコセッシ、主演はロバート・デ・ニーロという、安定の組み合わせです。『タクシードライバー』(1977)『レイジング・ブル』(1980)『キング・オブ・コメディ』(1983)『グッドフェローズ』(1990)など、監督の初期作では必ずコンビを組んでいました。最近でも『アイリッシュマン』(2019)で復活しています。
共演には、危険な男・ニッキ―を演じたジョー・ペシ。彼も監督作の常連ではありますが、一方で『ホーム・アローン』(1990)の泥棒役でも知られています。また、妻を演じたシャロン・ストーンは、『トータル・リコール』(1990)や『氷の微笑』(1992)で有名となりました。
『レザボア・ドッグス』(1991)
続いては『レザボア・ドッグス』のご紹介です。
8人の男たちがレストランで会話しています。どうやら彼らは宝石強盗を企てた一味のようで、仕事の前に朝食をとっていたところでした。簡単な案件だと思っていましたが、結果としては、予想外の展開で仲間の1人が警官に頭を撃たれて死亡、もう1人が重傷に。てんでばらばらにアジトに逃げ帰ってきた彼らは、裏切り者は誰だったのか、互いの正体を探り合います。
日本のヤクザ映画のレジェンドである『仁義なき戦い』(1973)の大ファンだ、と公言している、クエンティン・タランティーノ監督のメジャーデビュー作です。確かに、粗暴でリアリティのある銃撃戦や、各々のプライドが衝突する構図には、その影響が見て取れます。ですが一方で、黒服の男たちが、実にどうでも良い、くすっと笑えるような世間話を繰り広げる、という、それまでのヤクザ映画のテンプレートには見られない新鮮さがありました。
なんか、マドンナの曲の歌詞について、どーでもいいことをずっとだらだらしゃべってるんだよね〜
このスタイルは、その後の『パルプ・フィクション』(1994)や『ジャッキー・ブラウン』(1997)といった初期作に引き継がれていき、監督のカルト的な人気に火をつけました。
出演するのは、タランティーノを発掘したハーヴェイ・カイテル。前述のスコセッシ監督の映画でも、たびたびギャングの役を演じています。まだまだ無名時代のティム・ロスやスティーヴ・ブシェミも、荒削りながらも好演しています。
『地獄でなぜ悪い』(2013)
お次はコメディ、『地獄でなぜ悪い』のご紹介です。
暴力団組織・武藤組の組長の娘のミツコは、10年前に子役として一躍人気になります。母親のしずえは、このまま女優になって映画で活躍して欲しい、という夢を抱いています。しかしある日の抗争に巻き込まれたしずえは、敵を殺して刑務所に入ってしまい、それが原因でミツコも芸能界から姿を消します。そして時が経ち、しずえの出所の日。組長の武藤は、自分のせいで娘の道が途絶えたことを悔やむしずえの罪悪感を晴らしてやろうと、ミツコが主演の映画を撮ろうとしていました。しかし娘は、たまたま出会った気弱な男・橋本を「彼氏だ」ということにして駆け落ちをし、組から逃げ出すものの、程なく捕まってしまいます。ミツコは、武藤らに殺されそうになった橋本をかばうために「この人は映画監督なの」とウソをつき、それなら命と引換えに映画を撮れ、ということに。橋本は映像制作をしている友人の平田に協力を依頼するのでした。
形式としてはシチュエーション・コメディではあるものの、監督が『自殺サークル』(2002)や『冷たい熱帯魚』(2011)の園子温ということもあり、バイオレンス表現はきちんと生々しい、れっきとしたヤクザ映画に仕上がっています。
ミツコ役には映画・ドラマにひっぱりだこの二階堂ふみ、巻き込まれた男・橋本は星野源、映画狂の平田には長谷川博己がキャスティング。一方の極道側は、組長に國村隼、その抗争相手に堤真一と、こちらも豪華。主題歌も星野源が担当しました。
『すばらしき世界』(2021)
続いては、ちょっと変化球、『すばらしき世界』をご紹介します。
若くして極道の道に足を踏み入れていた三上は、殺人罪で刑務所に13年間収容され、晴れて出所となりました。堅気として生きていくことを決めた彼は、生活保護を受け、安アパートで暮らし始めます。市の担当者や、身元引受人になってもらった老弁護士の夫婦、近所のスーパーの店長など、温かい人たちの助けもあり、徐々に社会復帰していきます。そんな彼の生活に、ドキュメンタリーの記者・津乃田は密着しますが、時折現れる、彼の暴力的な一面が気になるのでした。
犯罪や戦いを描いた、いわゆるヤクザ映画ではなく、「その後」を描いたという、一風変わった作品です。もともと悪人であった彼は、不器用ながらも正義感を持って、生まれ変わった生活をしようとしますが、日常にあふれる「あるトラブル」に出会ったとき、どういう行動を起こすのか、が見ものです。何が正義で何が悪なのか、わからなくなる、考えさせられるストーリーでした。
主演は、あらゆる映画で主役を張ってきた、前述の役所広司。本作でも、複雑な感情を、わかりやすくエネルギッシュに演じています。かつての極道の仲間を演じたのは、役柄が実にぴったりな白竜とキムラ緑子。それ以外にも、六角精児、北村有起哉、橋爪功といった、個性的な面々が脇を固めています。
監督は、『ゆれる』(2006)や『夢売るふたり』(2012)、『永い言い訳』(2016)の西川美和。これまではすべてオリジナルのストーリーでしたが、今回始めて、『身分帳』(1990)という、佐木隆三の長編小説を原作に置きました。
『ゴッドファーザー』(1972)
最後は、王道中の王道、『ゴッドファーザー』のご紹介です。
1945年のニューヨークが舞台。イタリア・シチリア島出身の移民ながら、一代でコルレオーネ家というマフィア組織を気づいたヴィトー。そんな彼の娘、コニーの結婚式が開かれていました。パーティの最中も、マフィアながらも義理堅く高潔なヴィトーのもとには、彼を尊敬する人々が代わる代わる相談にやってくるのでした。しかしある日、敵対したマフィアの組織により、ヴィトーは狙撃されてしまいます。短気な長男や部下たちは報復のために全面抗争を引き起こします。それまでは堅気だった次男のマイケルは、責任感と父への思いから、マフィアの世界に入ることを決意するのでした。
知らない人はいない、今でも色褪せない名作なので、わざわざ紹介するまでもないかもしれませんが、取り上げないのもかえって不自然なので、ここに記しておきます。
制作当時は評価の低かったフランシス・フォード・コッポラが監督。ドン・コルレオーネ役のマーロン・ブランドも、かつては人気があったものの、落ち目の俳優でした。また、マイケルを演じたアル・パチーノを始め、長男役のジェームズ・カーンや弁護士のロバート・デュヴァル、マイケルのガールフレンドのダイアン・キートンも、当時は全くの無名。そもそも、イタリア系のマフィアを題材に映画を撮るという試みは、ハリウッドで例のないものでした。
しかし、蓋を開けてみると、世界樹で爆発的なヒットとなり、アカデミー賞の作品賞も受賞。そして今でも、各国のオールタイム・ベストには必ずと言って加えられる作品となりました。
その魅力は、「総合映画」だというところにあります。本作で描かれるのは、誰にとっても経験のある、普遍的な物語です。血の争えない親子関係であったり、野心に突き動かされる高揚感であったり、皮肉な盛者必衰であったり。そんなストーリーを、重厚な映像と音楽に乗せて、骨太に描かれた映画です。