2021年8月6日、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』が公開されます!
『ワイルド・スピード』(2001)から続く人気シリーズ、本作がなんと10作目です。当初はストリート・レースを題材としたクライム・サスペンスでしたが、回を追うごとに車にありえない改造が施され始め、ついには空を飛び、氷上を駆け、他には類を見ないド派手なカーアクションを披露してきました。
こちらの最新作では、ヴィン・ディーゼル演じるドミニクの「ファミリー」の前に、実の弟が敵として登場し、またもや世界を揺るがす危機に立ち向かうことになります。
そこで今回は、カーチェイスが印象的な映画をご紹介します!
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)
最初にご紹介するのは、伝説のカーチェイス映画の最新作、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』です。
世界大戦後の近未来。核戦争により文明が失われ、世界は荒廃した砂漠で覆われています。もともと警官であったマックスは、幻覚に悩まされながら荒野をさまよっていました。するととつぜん拘束され、イモータン・ジョーをリーダーとする、邪悪な武装集団の砦に連れて行かれました。彼らはこの時代に貴重な水を独占することで、その地域一帯を支配していました。ある日、部下のフュリオサが5人の妻を連れて逃亡したことを知ったジョーは激怒。マックスは、ジョーの部下・ニュークスの「輸血袋」として、その追走に連れ出されるのでした。
暴走族系SFと言って良いのでしょうか、『マッドマックス』(1979)、『マッドマックス2』(1981)、『マッドマックス/サンダードーム』(1985)と同じ世界を舞台にした正式な続編で、監督も同じジョージ・ミラーが担当しました。『マッドマックス2』の、いまでも伝説に残るカーアクションも充分に刺激的ですが、それから30年以上たって現在の技術を持って制作されると、そのスケールは桁違いとなりました。
ほぼ全編がカーチェイスという映画で、エンジンの爆音が終始鳴り響きます。砂を巻き上げ、炎を吐きながら爆走する装甲車たちの迫力がエキサイティングです。また、釣り竿のような器具を使って敵の車に乗り移るのは、この映画ならではかと思われます。
これまで主役だったメル・ギブソンはシリーズを卒業し、今回のマックスは、トム・ハーディが演じました。『インセプション』(2010)で産業スパイの一員を演じ、『ダークナイトライジング』(2012)ではベイン役に抜擢、一方で、全編独り芝居の『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(2013)ではロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞するなど、その活躍の幅を次々に広げている、信頼できる俳優のひとりです。
『ベイビー・ドライバー』(2017)
続いてはポップなアクション映画、『ベイビー・ドライバー』です。
通称「ベイビー」は、子供の頃の事故により耳鳴りがやまないため、常にイヤホンでポップミュージックを聞いています。また、彼には天性のドライビングテクニックがあり、銀行強盗の「逃がし屋」として、裏社会の首領、ドクに雇われていました。ある日、ウェイトレスのデボラと出会って一目惚れした彼は、次の仕事を最後に、犯罪から足を洗うことを決意します。しかしドクはそれを許さず、そして、これまでにない危険なメンバーが集まった、大きなヤマがやってきます。
とにかく運転の技術が美しいカーアクション映画です。ベイビーが運転する逃走車は、あたかも氷上を舞い巡るフィギュアスケーターかのように、車と車の間をドリフトして華麗にすり抜けていきます。
監督のエドガー・ライトはイギリス出身。『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)など、サイモン・ペッグとニック・フロストと組んだコメディのシリーズで頭角を現しましたが、本作ではシニカルなギャグを封印し、本格派の逃避行アクションを発表しました。
主演のアンセル・エルゴートは本作でブレイク。スティーヴン・スピルバーグがリメイクした『ウエスト・サイド・ストーリー』でも主演を務めることが決まっています。ヒロインのデボラは、実写版の『シンデレラ』(2015)に抜擢され、その後は『高慢と偏見とゾンビ』(2016)や、ダニー・ボイル監督の最新作『イエスタデイ』(2019)でもヒロインを演じたリリー・ジェームズ。
脇を固めるのは、『Ray/レイ』(2004)でレイ・チャールズを演じ、アカデミー主演男優賞を受賞したジェイミー・フォックス。また、悪の組織の首領には、『セブン』(1995)の殺人犯や『ユージュアル・サスペクツ』(1995)の語り手など、数多くの個性的な役柄を演じてきたケヴィン・スペイシーがキャスティングされました。稀有な俳優でしたが、近年はセクシャルハラスメントで告発され、活動を制限されています。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)
お次は、韓国発の人気ホラーの続編、『新感染半島 ファイナル・ステージ』です。
突如として人間を凶暴化するウィルスが蔓延した韓国は、一気に壊滅状態となりました。それから4年、香港に亡命していた元軍人のジョンソクには、パンデミックから逃げ出す際に、助けを求めてきた家族を救わなかったことが、今でも心に引っかかっていました。そんな彼に、今でも感染者が溢れるソウルに潜入し、乗り捨てられたトラックを探して積まれている現金を回収してくるという、非常に危険な仕事が舞い込みます。仲間を集めて朝鮮半島に上陸しますが、大勢の感染者や、地域を自治している、生存者で構成された野蛮な武装集団に襲われます。
前作では、高速鉄道という密室でゾンビと戦うという設定でしたが、今回はまた一気にスケールが大きくなり、前述した『マッドマックス』に近い、ディストピアの世界が舞台となりました。
あれ?これってゾンビ映画なんじゃ・・ どこがカーチェイスなの?
本作に出てくるイ・レが演じる少女は、車を運転してゾンビと戦います。その手法が新しい。次々に湧き出て襲ってくるゾンビたちを、なんと、ドリフトさせた車の側面で一網打尽に跳ね飛ばすのです。こんな映像は観たことなく、圧巻でした。「ゾンビ」×「カーチェイス」という組み合わせは、これまでにはないアイデアで、かなり新鮮です。
主演のカン・ドンウォンは『華麗なるリベンジ』(2016)で端正な詐欺師を演じて人気を博しました。また、武装集団「631部隊」のソ大尉は、『夢のジェーン』(2014)や『なまず』(2018)といったインディーズ映画で活躍する個性派俳優、ク・ギョファンが演じました。
『ブルース・ブラザーズ』(1980)
続いて、今も語り継がれる名作、『ブルース・ブラザーズ』です。
強盗の罪で服役していたジェイクは、刑期を終えて出所、弟のエルウッドに迎えに来てもらいました。育ててもらった孤児院に挨拶に行ったところ、その施設が潰れる危機にあることを知ります。詳しく話を聞くと、税金を払えないために、立ち退きを要求されているということでした。金を稼いで院を救うため、彼らはバンドを組むことにしました。
サタデー・ナイト・ライブ内で、映画と同名のバンドを組んでいた、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが主演。黒いスーツにサングラス、黒いハットというスタイルがキャッチーな映画です。
そして、キャブ・キャロウェイ、アネサ・フランクリン、ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、ジョン・リー・フッカー、チャカ・カーンといった、数多くの一流ミュージシャンが参加したということでも有名です。
レイア姫も出てるよね!
ただ、本作の魅力は、そのごきげんな音楽たちだけではありません。映画の中盤から、主人公たちは警察や軍隊に追い回される身となるのですが、何百台という大量のパトカーを、これでもかというくらい贅沢に投入したカーチェイスが始まります。これには圧巻。
『ドライヴ』(2011)
最後は、ラブストーリーと言っていいでしょう、『ドライヴ』をご紹介します。
主人公は、自動車整備工場で働きながら、映画やドラマのスタントドライバーとしても働いていました。しかし、彼にはもうひとつの顔が。その傑出した運転技術を買われ、強盗の逃走を手助けする「逃がし屋」の仕事をしていました。ある日、同じマンションに住むアイリーンと出会って恋をします。しかし彼女には、刑務所に服役した旦那がいました。その夫が刑期を終えて帰ってきますが、刑務所で出会った街の裏稼業のクックにそそのかされて、新たな強盗に加担させられることになりました。アイリーンの幸せを願う主人公は、そのドライバーを買って出ることにしました。
『ベイビー・ドライバー』に続いて「逃がし屋」の話ですが、世界観は180度異なり、こちらは静謐でクールな作品です。コントラストの強い色彩による印象的な映像が連なり、ただのラブストーリーとしても面白いのですが、そこにカーチェイスやサスペンス要素が加わる、不思議なまとまり方をしている映画です。
主演のライアン・ゴズリングは、『きみに読む物語』(2004)でブレイク、『ブルーバレインタイン』(2010)や『ラ・ラ・ランド』(2016)といったラブストーリーでその才能を発揮してきましたが、一方で『L.A.ギャングストーリー』(2013)、『ブレードランナー2049』(2017)のような骨太の作品でも活躍。草食系の優男に見えるのに、どこか狂気も感じさせる、不思議な俳優です。
ヒロインのキャリー・マリガンは、『17歳の肖像』に主演して一気にブレイク、カズオ・イシグロ原作の『わたしを離さないで』(2010)や、レオナルド・ディカプリオと共演の『華麗なるギャッツビー』(2013)などでも強い印象を残してきました。最新作の『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)では新境地を開拓しています。